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たださまようだけでいい、自由で優しい空間―「THE ENDLESS FOREST」でのんびり癒されよう
MMORPGは疲れる――
初めて触れる MMORPGには驚きと興奮がある。終わりのないゲームは、尽きない宝の山のように感じる。仲間と喜びを分かち合い、思い出を共有できるという素晴らしい体験ができる。いいこと尽くめに思えるが、いつかは飽きがくるのが現実だ。レベル上げにも、アイテム集めにもとにかく時間がかかるし、時には現実世界さながらの人間関係に悩まされることすらある。そうしたストレスが積もり積もって、オンラインゲームとの付き合いに疲れてしまったあなたに、筆者はあえて「THE ENDLESS FOREST」をおすすめしよう。戦士たちよ、剣を捨て、今日から鹿になれ!
■スクリーンセーバーなのにゲーム? 不思議な新世界へようこそ
「THE ENDLESS FOREST」は、2002年にAuriea Harvey氏とMichael Samyn氏の2名によって設立されたベルギーの小さなゲーム開発スタジオ、Tale of Tales社の作品。OEXのニュースで以前取り上げた、童話“赤ずきん”をモチーフとしたホラーアドベンチャー「THE PATH」は、同社の初の商業作品となる。この作品のリリースは海外で3月18日が予定されている。
さて、話題を「THE ENDLESS FOREST」に戻そう。筆者が初めてこの作品の名を目にしたのは、海外のアート情報ブログだった。この不思議なオンラインゲーム(?)には、ゲーマーたちよりCG作家、デザイナーなど、デジタルアートにかかわる人々の方が早くに注目しているようだった。ほの暗い森を写したスクリーンショットは魅力的で、(どうして知られていないのだろう? 無料らしいし、じゅうぶんきれいだ)と疑問を感じずにはいられなかった。
本作は厳密には“ゲーム”と断言しがたい。公式サイトで“ The Endless Forest is a multiplayer online game and social screensaver”(「THE ENDLESS FOREST」はマルチプレイヤーオンラインゲームであり、ソーシャルスクリーンセーバーです)と紹介されているとおり、スクリーンセーバーとしても機能するのだ。画面のプロパティの“スクリーンセーバー”から「THE ENDLESS FOREST」を選べば、PCを休ませている間、ディスプレイは一頭の鹿が静かに眠る神秘の森になる。凝ったスクリーンセーバーとしてもじゅうぶん楽しめるのは素晴らしいが、どうも腑に落ちない。この作品のどのあたりがオンラインゲームなのだろう?
■鹿にはレベルもない、アイテムもいらない
スクリーンセーバーとしての使い方は分かった。次こそゲームを楽しもうと、プログラムを起動して、いきなりゲームが始まったことに驚く。筆者はアカウント登録の手続きを終えていない。この作品が完全無料なのは知っていたが、ログインしないで遊べるオンラインゲームというのは聞いたことがない。
あわてて公式サイトをチェックした結果、「THE ENDLESS FOREST」は無名の鹿として遊ぶならユーザー登録の必要すらない、ということが分かった。名前に当たる紋様“pictogram”をつけたいユーザーのみが登録を行えばよいらしい。pictogramを持つ鹿には特別な能力が与えられるそうなので、アカウントを登録しログインユーザーとして遊ぶことにした。
それにしても本作には、いわゆる“ゲームらしさ”が非常に少ない。プレイヤーは鹿だ。しかも全員同じ姿だ。レベルもなければ能力値も、持ち物もない。鹿にはそんなものは必要ないからだ。前述したように、名前もつけられない。さらに、しぐさによる感情表現はあるが、オンラインゲームに必須のチャット機能がない。鹿はしゃべらないからだ!
かくして名もなきもの言わぬ一頭の鹿となった筆者は、“果てなき森”( The Endless Forest)に立った。不安になるほど余計なもののない世界だ。OptionのNetworkでオンラインの人数(頭数?)が確認できる。少なくとも16体の鹿が森にいることは分かった。1サーバー16人。一般的なMMORPGの基準で考えれば、恐ろしい過疎状態である。
カーソルを画面下に持っていくと、その時使用可能なアクションのアイコンが表示される。最初にすることは立つことだ。立ち上がって思わずぎょっとした。体は鹿、だがその頭には人面がついている。アニメーション映画『もののけ姫』を連想する人も多いだろう。この点については公式サイトの FAQでも触れられている。ひとたび立ち上がると、選べるアクションが増えた。立った状態では、Lie Down(横たわる)、Roar(鳴く)、Emotions(感情表現)、Motion(身振り)、Listen(聞き耳を立てる)、Hop(跳ねる)が選べる。特定のエリアでは、さらに異なるアクションが選べるらしい。公式サイトをちらちらと見つつ、この森で、鹿として何ができるかを模索するため、筆者はとぼとぼと歩き出した。ただ歩くだけでは退屈なので、時々跳ねた。
この世界にワールドマップはない。ただし、プレイ画面の外枠に、だいたいこちらの方に何かがいる(ある)という情報がアイコンで示される。“聞き耳を立てる”アクションで、外枠のレーダーをより大きくして確認することができる。アイコンがおしゃれすぎて、どれがどの機能を持つのかは分かりにくい。正しい情報を知りたい方は公式サイトをチェックすることをお勧めする。
■言葉のないコミュニケーション―あなたは立派な鹿になれるか?
外枠レーダーにはいくつかの pictogramが表示されていた。これが他のプレイヤーのはずだ。筆者はオンラインゲームの要たるコミュニケーションに挑戦すべく、他の鹿を目指して進んだ。程なくして、3匹の鹿の群れと出会うことができた。筆者を入れて16匹中の4匹、つまりサーバー人口の4分の1がここに集っていると考えると、感慨深い気がしないでもない。
さて、何をしようか。会話はできないのだから、それ以外の方法− EmotionsとMotionsでなんとかしなければ。鳴いてみた。声がかわいくない、不評のようだ。他の鹿が近くにいるときはアクションアイコンにSniff(嗅ぐ)、Show Affection(親愛の情を示す)が表示される。鹿らしく、においを嗅ぎあってあいさつした。他の鹿がRoll on floor laughing(転げまわって笑う)をはじめた。みんなでまねる。次にDanceでみんなで踊る。鹿がそろって同じ動作をしている様子はほほえましい。しゃべれないのだから、言葉の壁を気にしなくていいのはありがたい。
原始的なコミュニケーションを繰り返して楽しんでいると、一頭がふと輪を離れた。少し歩いては振り向いて、ボエーと鳴く。ついて来いという意味だろう。ついていった先にはキノコの生えた木があった。 Eatでキノコを食べた鹿がこちらを向くと、筆者の鹿が光りだした。光が収まると、すっかり違う姿になっていた。これがユーザー登録し、pictogramを持つ鹿だけが使えるForest Magicだ。食べたり、特殊な場所に行ったりすることによって、鹿は魔法の力を蓄える。自分以外の鹿にその魔法をかけて、角・顔・毛皮などを変えさせることができるのだ。どこにどの魔法があるのかを探すのは、ゲーム的で楽しいフィーチャーだ。
■目標がないからこその余裕が持てるゲーム
“何をしたらいいか分からないほど自由度が高いゲーム”にはいくつか出会ってきた。だが、ここまで“何もしなくてもいいオンラインゲーム”というのには始めて出会った気がする。意地悪な言い方をすれば“することが少ない”のだが、鹿であることに徹するため、余計なゲーム的な要素をそぎ落とした本作は、大胆にしてユニークな良作だと評価したい。レベルを上げないといけないから、仲間が待っているからなどの理由で“毎日ログインしなければ”という切迫感がないのは非常に心安らぐ。制作者の 2人が創造神“Twin Gods”として降臨し、奇跡を起こすランダムイベントや、季節限定のイベントなどが時々行われており、そのタイミングだけを狙って参加するお祭り鹿たちもいるらしい。
本作を紹介したオンラインゲーム疲れ世代の知人たちは皆この作品を気に入って、筆者同様 1週間に1、2回、1〜2時間程度というかなりのスローペースで鹿ライフを満喫している。一緒に遊ぶことはない。たとえpictogramを持つもの同士であっても、待ち合わせは非常に困難だ。無名の鹿はレーダーに映らないため、狙った相手と会うことは絶望的と言えるだろう。試しに待ち合わせをしてみたが、とうとう会えずじまい。あとで聞いてみると、筆者とよく似たpictogramを持つ鹿を筆者だと思い込み、小1時間泉のほとりで遊んだという。他のプレイヤーと差をつけることが主眼となりがちなオンラインゲームの中で、「みんな同じだから、誰が誰でもまあいいや」が普通のこの雰囲気はかなり特殊なものだ。何も持たない鹿たちの暮らしは自由で身軽だ。ゆっくりと変化を続ける不思議の森で、自分なりの癒しの時を過ごしてみるのはいかがだろうか?
■THE ENDLESS FOREST 公式サイト http://tale-of-tales.com/TheEndlessForest/
■THE PATH 公式サイト http://tale-of-tales.com/ThePath/
■Tale of Tales 公式サイト http://tale-of-tales.com/
© Tale of Tales BVBA 2004-2007
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